2003年09月25日

「虚空の旅人」


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< 誠実であろうとすることのあやうさ >

外伝です。

今回の主人公はチャグム。一話で女用心棒バルサに助けられていた新ヨゴ皇国の皇太子。一話よりも大分成長したチャグムは、星読博士のシュガとヤルターシ海のサンガル王国へ向かいます。新王の即位の儀に皇国を代表して参加するためです。ところが、サンガル王国では謀反の企てが密かに進行中で、チャグムたちは望むと望まないと似かかわらず、その陰謀と呪詛の中に身を置くことになるのです。
呪詛の中心になるのが<ナユーグル・ライタの目>となった5歳の少女エーシャナ。彼女は、自分を取り戻さなければ海に返されてしまいます。それは即ち死を意味し、チャグムは彼女を救いたいとある行動を起こします。
サンガル王国は、どうなるのか。チャグムはエーシャナを救えるのか。

今回の舞台は、海の香りがしてきそうな描写が印象的。
バルサは、出てきませんが、やはりただものではない女性がでてきますよ。
サンガル王国は、王家の女性たちが裏で政治を動かすという国。この国の制度も興味深いです。(そのことが、謀反の原因の1つにもなっているのですが。)今回もこの世界と重なっているもうひとつの世界が見え隠れし、重要な鍵となります。
チャグムが、国の重要人物であるということを嫌がりながらも、その責任を全うし、よい国を作りたいという思いを強く持っているのだという部分が頻繁にでてきます。ああ、すねているだけの子どもから少年、青年へと成長しているのだと感じました。
サンガル王国のタルサン王子との比較が対称的で、同じく誠実であろうとする2人のあやうさが、物語を支えている。あやうさを持ちつづけて、大人になることの難しさ。でも、そのあやうさを持ちつづけてよい国を築いてほしいと思います。とても人間臭い物語です。

投稿者 yura : 2003年09月25日 18:56
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